闇の犯罪サービスRaaS

更新日:2025.01.19 投稿日:2025.01.19 サイバー脅威

執筆者:VNW事務局 コラム担当

近年、サイバー犯罪の手口は急速に進化し、犯罪者がますます高度な手法を駆使するようになっています。その中でも「RaaS(Ransomware as a Service)」という新たな犯罪モデルが大きな脅威になっています。

このRaaSは、コンピューターやネットワークを攻撃し、データを暗号化したりアクセスを制限したりして、被害者から身代金を要求するランサムウェア攻撃を、非常に効率的かつ収益性の高い「闇ビジネス」にしており、最近のランサムウェア攻撃の急増と密接に関係しています。

本記事では、RaaSの仕組み、背後にある危険性、そしてそれに対する対策について説明します。

RaaSとは

ランサムウェア攻撃は、高度な技術を要する犯罪手法であり、これまでは特別なプログラミングなどの知識を持つ一部の攻撃者が行うものでした。ところが、RaaSはこれをあたかも「商業サービス」であるかのように、技術的な知識が無い犯罪者でも攻撃を実行できるような仕組みを、犯罪者組織間で提供しているのです。これにより、手軽にランサム攻撃を仕掛ける手段として広がり、攻撃の敷居が大きく下がってしまいました。

その「ビジネスモデル」では、高度な専門チームから成る「サービス提供者」が開発したランサムウェア攻撃ツールを、「サービス利用者」である他の犯罪者に「販売」または「レンタル」します。これにより、ランサム攻撃実行犯はランサムウェアを簡単にダウンロードして攻撃を仕掛けて身代金を得た後、その一部を提供者に支払うことで、双方にとって魅力的な収益源となっているのです。

RaaSツールキットは、ランサムウェア攻撃を実行するために必要な要素を包括的に提供する、正に「パッケージ商品」のようなものです。

また「RaaS市場」は分業化が進んでおり、「アクセス・ブローカー」や「データ・ブローカー」といった専門家も存在しており、これらの専門家はネットワークへの侵入経路やターゲットリストを提供し、攻撃の成功率を高めています。

RaaSツールキットの主な特徴

  • 使いやすさ:高度な技術知識がなくても、攻撃者が容易に利用できるよう設計されています。
  • 包括的な機能:ランサムウェアの配布から身代金の回収まで、攻撃に必要な全ての機能が含まれています。
  • カスタマイズ性:攻撃者のニーズに合わせて、様々な設定やオプションを調整できます。

ツールキットの主な内容

  • ランサムウェア本体(暗号化機能,ファイル拡散機能,身代金要求メッセージ生成機能)
  • 攻撃インフラ(コマンド&コントロール・サーバー,匿名化ツール)
  • 管理ツール(被害者管理ダッシュボード,暗号鍵管理システム)
  • 支払い処理システム(暗号通貨ウォレット統合,自動支払い確認機能)
  • 追加機能(データ窃取機能,脆弱性スキャナー,スパム配信ツール)

配布方法

RaaSキットは主に、ダークウェブ上のフォーラムやマーケットプレイスで販売されています。これらのプラットフォームでは、あたかも正規のソフトウェア製品と同様に、ユーザーレビューやフォーラム、バンドルオファーなどが提供されることもあると言われています。

RaaSの急成長

RaaSは、従来のランサムウェア攻撃を大幅に簡易化しました。その結果、犯罪者が手軽に攻撃を仕掛ける手段として広がり、攻撃の敷居が大きく下がってしまいました。これに伴い、攻撃対象が広範囲にわたり、企業や政府機関、大規模なインフラなどが標的になるケースが急増しています。

さらに、RaaSのプラットフォームは主にダークウェブ上で運営されており、匿名性が高いことも成長の大きな一因となっています。これにより、提供者や利用者の特定が困難で、国際的な捜査が追いついていないのが現状です。

RaaSのおそろしさ

サイバー犯罪の「ビジネス化」

RaaSの登場は、サイバー犯罪を分業ビジネスの形にしました。プログラミングの知識がなくてもランサムウェア攻撃が実行可能になったことで、実行犯の数が急増しています。そのため攻撃対象が広範囲にわたり、企業や政府機関、大規模なインフラなどが標的になるケースが急増しています。

初心者の犯罪者でも、RaaSプラットフォームを利用すれば、ターゲットリストを選択し、攻撃を自動的に実行することができるため、攻撃の規模や頻度が劇的に拡大しています。また、攻撃対象の多様化も進んでおり、個人、中小企業や非営利団体も被害に遭うケースが増えています。

大規模インフラへの影響

またRaaSを利用した攻撃は、医療機関や公共インフラなどにも及んでいます。これらの攻撃が成功した場合、社会的影響は甚大であり、人命に直接的な危険を及ぼすこともあります。特に、重要なデータが暗号化されることで、組織の運営が完全に停止するケースも報告されています。

例えば、2021年に発生した医療機関へのランサムウェア攻撃では、患者のデータが暗号化され、診療が一時停止する事態に陥りました。このような攻撃は、被害を受けた組織だけでなく、社会全体に深刻な影響を及ぼします。

法的対応の難しさ

RaaSのプラットフォームはダークウェブ上で運営されており、犯罪者が匿名性を確保しています。このため、国際的な法執行機関が協力しても、攻撃者の特定や摘発が難しいという現実があります。また、各国間での法制度の違いも捜査の障壁となっています。

暗号通貨の活用

さらに、ランサムウェア攻撃に関与する暗号通貨の使用も問題を複雑化させています。ビットコインなどの暗号通貨は匿名性が高く、資金の流れを追跡することが困難です。このため、身代金の支払いが犯罪者にとって安全で魅力的な手段となってしまいます。

RaaSによって急増しているランサムウェア攻撃への備え

RaaSという新たな犯罪モデルであっても、ランサムウェア攻撃に対する備えは基本的に不変です。

定期的なバックアップ

データの定期的なバックアップは、ランサムウェア攻撃に対する最も効果的な対策です。特に、オフラインでのバックアップ保存は、攻撃による影響を最小限に抑えるために重要です。

企業は、バックアップデータを定期的にテストし、実際に復元可能かどうかを確認することが求められます。また、バックアップポリシーを定期的に見直し、新たな脅威に対応できるようにする必要があります。

セキュリティ教育の徹底

社員やユーザーへのセキュリティ教育も不可欠です。フィッシング攻撃のリスクや、不審なメールを開かないことを周知徹底することで、攻撃成功率を下げることができます。

具体的には、疑わしいリンクや添付ファイルは絶対に開かないよう注意を促すほか、社員が疑わしいメールを迅速に報告できる体制を整えることが重要です。また、定期的な模擬フィッシングテストを実施することで、組織全体の警戒心を高めることもできます。

脆弱性管理とパッチ適用

ソフトウェアやシステムの脆弱性を悪用されないよう、最新のセキュリティパッチを適用することが重要です。企業は定期的な脆弱性スキャンを実施し、脅威に対処するための体制を整えるべきです。

さらに、ゼロデイ攻撃への対応も考慮する必要があり、これには侵入検知システム(IDS)や侵入防止システム(IPS)の導入が効果的です。

※ IDS(Intrusion Detection System):不正アクセスされたり異常な通信があった際に、その侵入を検知して管理者に通知するシステム。

※ IPS(Intrusion Prevention System):不正アクセスなどの異常を検知した際に、自動で通信を遮断するシステム。

複雑なパスワードと二要素認証

強力なパスワードの使用や二要素認証の導入は、RaaSによる攻撃を防ぐために最も効果的な手段です。これにより、ランサムウェアがシステムに侵入するリスクを大幅に減少させることができます。

パスワード管理ツールを活用し、長く複雑なパスワードを生成・管理することが推奨されます。また、二要素認証を全社的に導入することで、不正アクセスのリスクをさらに低減できます

まとめ

RaaS(Ransomware as a Service)は、犯罪者にとっての利便性と効率性から急速に拡大している、大変危険なサイバー犯罪手法です。このモデルの台頭によって、サイバー攻撃は手軽かつ大規模に行われるようになり、被害の範囲がますます広がっています。

この脅威に対抗するためには、多層的な防御策と意識向上が必要であり、企業や個人は、データとシステムを守るために、一丸となって立ち向かうことが求められます。

また、国際的な取り組みも非常に重要です。各国の法執行機関が協力し、RaaSの運営者を追跡・摘発することで、この新たな脅威を根絶するための基盤を築く必要が求められています。

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